第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
【五条side】
記憶が戻ったのならこっちのもんだと、五条は思っていたが、どうもそう上手くはいかないようだ。
まだ断片的にしか思い出していないは、自分が以前五条の恋人であったことを信じられないようで、五条を拒否していた。
しかし、その拒否の仕方も五条にとっては、可愛い仕草のひとつでしかなかった。
「ちょっと話するから。」
五条が夏油と硝子にそういうと、二人は医務室から出ていった。
再び二人になった五条は布団の中でくるまって出てこないを笑った。
「ねぇ。前もこうやって布団に入って丸まって隠れてたの覚えてる?」
「……し、知らないです。」
まだそこまでは記憶が戻っていないは、布団の中でもそとそと声を出した。
「ごめんね。恋人だったこと、黙ってて。」
「……。」
はそれを責めたりはしていなかった。
最初から恋人だと話されたとしても、きっと信じていなかった。
むしろ『今からまた仲良くしよう』と言ってくれた五条のほうが、紳士的で信用できただろう。
は布団の中でぐるぐると考え込んでいた。
“悟さん”と携帯に登録されて、たくさん並んだ着信履歴も、私の家のリビングを知っていたことも、家にいる抜け殻の呪霊たちが五条に懐いていてことも全部説明がつく。
「今からすぐ、前と同じように恋人として接してなんて言わないけど。」
「……。」
「を口説くことは許して欲しい。」
「くどっ…!」
の布団があからさまに揺れた。
「が……宿儺のために千年前の記憶を取り戻したのは知ってる。」
「……。」
「それでも、が好きなんだ。」
「……。」
は黙って五条の話を聞いていた。
体温が上がって、布団中で汗をかいてしまいそうだった。