第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
【side】
呪霊の領域展開の中で五条さんに肩を抱かれ、水の中から救い上げてもらった時、私の頭に中にひとつひとつのシーンのように情報が入ってきた。
それは、千年前の記憶が戻ってきた時とは少し違う感じがした。
“好きだよ…。”
五条さんに抱きしめられてる過去。
“わかんない。全部好き。”
私が五条さんに思いを伝えてる過去。
手を繋いで京都の川沿いを歩いてる時の過去。
五条さんは自分のものだと、ナイフを自分の胸に突き刺した過去。
ほんの一部だけだったけど、少しだけ思い出した。
「気が付いた?」
「……ん。」
うっすらと目を開けると、一度だけ会ったことのある女性が私を見下ろしていた。
…確か。
「家入…さん?」
「よく覚えてたね。今、術式施したから。身体の異常は全て取り除いたよ。ただ、まだ弱ってはいるから無茶しちゃダメだよ。」
まだふわふわする意識の中で、私は頷いた。
「…涙。大丈夫?まだ痛む?」
布団で仰向けになったまま私は勝手に流れる涙を拭こうとしたが、それより先に家入さんがハンカチで吐いてくれた。
「いえ…、なんか……色々思い出しちゃって、感情がびっくりしてるんだと思います。すみません…。」
「思い出した…?何を?五条のこと?」
早口で質問され、私は戸惑いながらも少しだけと、頷いた。
「少し…ね。」
「でも、本当にこれが自分の記憶なのか…ちょっと……」
あの五条さんとまるで恋人のような記憶を思い出し、私は自分を疑った。
だって、あの有名な“五条悟”だ。
そんなすごい人が、私の恋人だなんて釣り合うはずがない。
“なんで忘れちゃうかな…バカ。”
「…っ!」
後ろから抱きしめられて言われたのかとあのセリフを思いだし,私は顔が熱くなるのがわかった。
ーー…本当に五条さんは私の恋人だったのだろうか。
「疑ってるみたいだな。」
「だ、だって…。」
私は布団から少しだけ顔を出し、家入さんをみた。