第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
朝、高専から阿曽に帰る支度を借りた部屋でしている時のことだった。
机に置いていた携帯が鳴り出したので、私は番号を確認した。
「んー?高専から?」
今高専にいるというのに、高専からの電話だった。
よく話をする人とは個人の携帯と連絡先を交換しているが…、高専の代表の番号とはたまに依頼の話だったりで話をしていた。
主に補助監督さんや、事務などの雑用をしている人と話をしていた。
「はい。」
電話に出たというのに、電話口の向こうの人の呼吸は聞こえるのに、話出さない。
『…っ、あ……えっ……と』
もぞもぞど何かは聞こえる。
「もしもし?」
再度声をかけると、向こうの人はひゅっと息を吸い込んだ。
『電話っ…すみません!今日帰ってしまうって聞いて…その!電話しなきゃって!あの!』
「…はい?」
充分聞こえるのに、大きな声だ。
たぶん緊張しているんだろう。そんな感じの話し方だった。
『あの!今から少しだけ話せませんか!?話したいことがあって!』
「えっとーー、ごめんなさい、どなたですか?」
高専から電話がかかってきたと言っても、声だけで誰かまではわからない。
『あっ!!名乗ってないっ!ごめんなさいっ!」
その慌てようと言ったら、なんだか可愛くて私はくすくすと笑った。
「大丈夫ですよ。落ち着いて。」
「わっ!わぁ…!」
すごいとか、やばいなどと、まだ落ち着きのない電話の向こうの男の子に、私は名乗るのをゆっくりと待った。
「すみません!俺、綱手川って言います!」
「はい。」
知らない名前だった。
と、いっても私がよく話をする補助監督さんは伊地知さんばかりなので、ほとんど知らない人なのだが。
「補助監督3年目になります!あのっ!今からさんのところに行って、お話してもいいですかっ!?」
基本的に元気で大きな声の子だなって思った。
電話では話せないことでもあるのだろうか。
「はい。では部屋の前で待ってます。」