第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
夏油は空を飛ぶエイのような呪霊から、高専に飛び降りた。
そしてまた取り込むと、高専の建物内に入っていった。
「おかえりー傑。」
「あぁ。」
「どうだった?。」
二人で廊下を歩きながら五条が聞いた。
「変わらず優しいだったよ。」
笑顔も気遣いも、何も変わらない。
ただ五条を忘れている。その一点だけだった。
「でしょ?人格ももともと阿曽巫女と変わらないのかもしれないね。」
「ただ記憶は塗り替えられてるようだった。」
「…。」
2人で会議室に入りながら夏油はため息をついた。
五条がソファに腰掛け、夏油も向かいのソファに座った。
「京都の研修のことも覚えてるし、特に変な感じはしないけれど、一人暮らしをしていたと思ってるようだ。」
少し前まで、五条家の屋敷で保護していたはずなのに。
本当に五条と五条の周りで起きたことのみを綺麗に記憶から抜け落ちているようだった。
ーー…だがどうして。
五条は黙り込み考えているようだった。
「あと……」
夏油は五条に言うのを迷った。
がまるで宿儺を想っているようだったと。
これを五条に伝えることは本当に最善と言えるのだろうか。
「何?」
「いや…、また高専に来るって。お前と話したいそうだ。」
「そっ。」
夏油は言わなかった。
恋人だった人が、急に自分を忘れ他の人を想っているだなんて、そんな酷なことを目の前の親友に言うことは出来なかった。
それに、夏油は五条を甘く見てはない。
夏油はわかっていた。
いくらが記憶を無くそうと、また惚れさせることを。
いくらが他の男を想っていようと、また奪い返すことを。
(この二人ならきっともう一度始めからーー…)