第19章 もう一度貴方と (番外編3)
ズキズキと未だに痛む頭に宿儺は私に近づいた。
「記憶が曖昧なのか?」
「んー?そんなはずはないけど…。全てを覚えてるわけじゃないからね。昔のことは普通に忘れてるよ?」
「……(しかし五条悟は昔ではない。)しかし、どうやって記憶を戻した。」
「この子に預けてたの。」
私はふわっとハクを撫でた。
「私が貴方の首を埋葬した神社の鳥居をくぐったらスイッチが入ってハクが解放されるように。貴方ほど邪悪で最悪な人を埋葬したらきっと何百年と神社は残されるだろうと思ってね。」
ふふっと笑って言うと、宿儺がまた一歩私に近づいた。
「ーー…そうか。忘れたか。」
「……?」
にやっと笑う宿儺は平安の時の大きな体の宿儺の笑い方と同じで、体は虎杖くんだけど、宿儺そのものに見えた。
「…宿儺。ーーー…もう私は貴方を封印するようなことはしたくないよ。」
「……。」
宿儺は黙って何も言わないまま、私の頬を撫でた。
「…またくる。」
宿儺は一言そういうと、消えるように私の前からいなくなった。
千年前、史上最悪の呪いの王と言われ、やっとの思いで術師たちに弱体化された宿儺の、指を切り落としそれに封印し各地に葬ったのは私だ。
それでも死なない宿儺の首を私の阿曽の地の近くの神社に埋め、鎮魂させたのも私だ。
ーー…どんな思いで彼を封印したと思ってるの。
それでも彼が忘れられなくて、封印した後のことが気になって、自分の記憶をハクに託した。
「ずいぶんとおとなしくなったのね、宿儺。それならーー…」
それなら許されるだろうか。千年前に秘めていた想いを、もう一度ーー…。