第1章 二人は一緒
休みの日のことだった。
私は推しの実況者のグッズが期間限定ショップで売られるというので、池袋の駅前に来ていた。
推し本人は今日はこないけれど、明日は抽選で当たった私は手渡しでグッズが買えるのだ。
だから、今日は下見だ。
あまりオタク感が出ないよう、私なりにおしゃれをしてるんるんと街中を歩いていた。
「あの、すみません。」
「はい?」
急に横から話しかけられて私はそちらに顔を向けた。
声をかけてきたのは女性で、私よりは年上のようだった。
黒髪であまり元気がなさそうだったが、急いでいるようだった。
「急にごめんなさい、さっきあちらの方がこれを落としたみたいで…。」
「……?」
そういって手渡してきたアクセサリーのようなもの。
「あの人です、あの人。」
私は女性が指差す方を見た。
真っ黒の服に真っ白な髪の毛で、背の高い男性だ。
「あの人?」
「そうです!すみませんが、彼が落としたようなので渡してもらえますか?私急いでて…」
ぐっと押し付けられ、肩にポンっと触れると、その女性は申し訳なさそうに頭を下げ、駅の方へとかけていった。
「え…っ、あ…。」
なんか、不思議な人だな。
そんな遠くないんだから、自分で渡せばいいのに…。
そんなことを思いながら、私は白い髪の男性を見失わないよう慌てて人混みをかきわけた。
交差点近くで本当に人が多い。
思った以上に背が高い男性の後ろに立ち、私は彼の肩を叩いた。
「あの……っきゃっ!!」
とたん、彼は驚いたように私の手をパシッと振り払った。
じんじんとする手の甲に私は驚いた。
叩かれるとは思わなかった。
「……え?………んー?」
不思議そうな声を上げながら自分の肩をさする男性。
振り向いて驚いた。
目が見えないのだろうか?
いや、うっすら布越しに見てる…?
ネックウォーマーのような黒い布を目に巻いた男性はずっと首をかしげていた。