第16章 エピローグ
「阿曽は一つの拠点だと思ってるの。」
「うーん。」
納得行かなそうな悟さんは私の頬をむにむにとつまんでいた。
「平安からの阿曽巫女の子孫って、きっと私だけじゃないと思う。私が特に血が濃かっただけで、私と同じような浄化を持つ子がいるじゃないかなって。」
「……。」
「そういう浄化の力を持つ子が困った時、ここに来てもらいたいの。ここがきっと目印になるから。だから私はここにいるよ。」
呪術師のやり方を間違ってるとか、高専の方向性が嫌だとか、そう言ったことは全くない。
呪いは呪いで祓う。日々悟さんがしていることは大切なことだ。
「悟さんが以前、“呪霊への見方が変わる時代が来るかもしれない”って言ってたの覚えてる?」
「うん。」
私は悟さんのお腹の上で寝ようとしてる小さな呪霊を撫でた。
「いつかそんな未来が来たら素敵じゃない?」
悟さんはふと上半身を起こし、微笑むと優しくキスをした。
ころっと転がった呪霊がピーと鳴きながら悟さんは指に齧り付いてる。
「んだよ、祓うぞー。」
そうでなくても、ここで呪力抑えるの大変なんだから。と、小さな呪霊を摘んで放り投げた。
「…だからね。」
私は悟さんから目を逸らした。
「ん?」
「五条家のご両親や、他の親族の方々。呪術界の上層部の方々が…そんな私でもいいって。遠く離れたここで呪霊たちを救う活動をしてもいいって許してくれるなら……その…」
私はもじもじしながら、悟さんの指先にそっと触れた。
「いつか私と結婚してください。」
「ははっ、の方がプロポーズロマンチックじゃん。」
「悟さんが、下手くそなの。だから私も断っちゃうんだよ。」
「断る気なかったくせに?」
「…そんなことない。」
「嘘つきー。」
「う、嘘じゃない。」
「心臓が繋がっていなくってもわかるよ。のことなら全部。」
「は嘘がつけないから。」
悟さんは私の頬に手を伸ばすと、返事だとだ言うように優しく深いキスをした。
おしまい