第12章 二人は
慌てて悟さんから離れようとしたけれど、腰に回って手が許してくれない。
「血なんてどうでもいい。」
「…っ。」
急に真剣な声に、私は体をかたくした。
チラッと見上げると、じっと私を見下ろす綺麗な瞳。
ぐっと体重をかけてきて、数歩下がると扉に背中が当たった。
悟さんの左手のひじが私の顔の横の壁に当たっている。
右手の指先が私の着物にできたナイフの穴に触れた。
「…っ。」
くすぐったい。
「ちゃんと我慢するから。の体調みて、無理そうなら途中でとめるから。」
右手の指先が今度は私の頬に触れた。
「すこしだけ。」
そう言って、私の顔を上に上げるとそっと唇を重ねた。
角度を変え、何度も重なる唇に私は手を悟さんの首に回そうとしたけれど、着物を少しキツく着ていたせいであまり肩が上がらなくて、悟さんの胸あたりの羽織に手を添えるだけになった。
「…たった数日なのに、もう一週間以上会えてなかった気がする。」
少し離れ、唇が触れるくらいの距離で悟さんがささやいた。
そしてまた再び優しく触れる唇。
熱くてーー柔らかい。優しいキス。
それは、啓明にされた乱暴なキスとも、血を舐め取るだけの宿儺のキスとも違うーー
「気持ちよくて、優しい悟さんのキス…好き。」
「…」
「んっ。」
私は羽織の中に手を入れ、腰から背中に手を回した。
悟さんの大きな手が耳から首にかけて撫でていくのが、気持ちいい。
もっとキスをして欲しくて、私は口を軽く開け、舌を少しだけ出してちらっと悟さんを見てねだった。
「…っ。」
一瞬困った顔をしたけれど、悟さんは舌をからめてくれた。
「んんっ…」
「…はっ、から誘ってくれるなんてね。」