第9章 二人で切り抜けろ
「でも、悟さんが見てる世界でしょ?」
「…。」
私は自分の手を見つめた。
使いこなせない浄化の力。
何かをやりたくても自分のことがわからない。
「私は無力で、悟さんの後ろで守ってもらうことしかできない。隠れて全てを任せることは簡単だけれど…。」
私は横の悟さんの膝に手を添えた。
強い呪霊が出たら駆り出される強い人。
五条家の当主。
導くためと、若い術師を育てる教師。
「全て貴方に背負わせることは出来ないよ。」
悟さんはじっと私を見つめた。
「“五条悟”は最強ってみんなが頼ることはあるけど、一人は寂しいよ。なら同じ景色を見ておきたい。」
「見るだけで戦えないんだけどねぇ、あはは」
なんて笑いながら言うと、悟さんは優しい顔で微笑んでくれた。
「“一人は寂しい”ね…どっかで聞いたセリフだな。」
「そうなの?まぁ、最強は孤高ってよく聞くけど、横に子鹿みたいな最弱いるから、ちょっとこっち側引き摺り込んであげるよ!」
自分の方に引っ張る動作をして遊んでいると、悟さんは私の頭をぽんぽんと叩いた。
「好きだよ、。」
「えっ!?どうしたの?急に!」
悟さんは微笑んだまま私の足を指差した。
「そう言えば、足。治してあげるよ。」
そうだ。
さっき捕まった時に、悟さんへのメッセージのために自分の爪で傷をつけたんだ。
私は靴を脱ぎ、座席の上に左足の足首を出した。
「これ見てきてくれた?」
「あぁ。たまに天才的なこと思いつくな。」
「たまにね!」
えへへと、照れ笑い。
「でも、ごめんね。傷つけて。」
「いいよ。も自分でやるの痛かったろ。」
「んもー!めっちゃ痛かった!バレないように顔に出さないのが辛くて!」
それでもその時は必死だったからなんとか出来た。
それを褒めてほしくて大袈裟に話した。