第84章 もう……逃げたくないんです

『何も言えなくて。ゴメン結翔ちゃん』

　俺は何も言えなくて。涙が出てきて。

『二宮さん、聞いて下さるだけで良いんです。父は、母と同じく『ひき逃げ』で家族を亡くされたご遺族と『死亡ひき逃げ事件の『公訴時効の撤廃を求める意見書』の提出を検討していると話てくれたんです』

『うん』　
　
『議会で採択されたら、国に提出して……『危険運転致死傷罪』で裁かれて20年の罪が科せられると思いますよね？』

『確か、超スピード違反での事件の判決、8年？だったよね？』

『現実は厳しいです。母をひき逃げしたした犯人は分からない。お願いだから自首して欲しい。早く捕まえて欲しい。だから、私は自分の出来る事をしようと決心したんです。まずは、SNSで情報提供を求める事にします。父にだけ、辛い思いをさせるなんてもう……逃げたくないんです』

『結翔ちゃん。ひとりじゃないから。俺も手伝うから』


『未唯彩と楓未奈も同じ事。ありがとうございます。二宮さんが母の為に泣いて下さって。それだけで……』