Peridot 幸せの花咲かせましょ〜初恋と宝石Ⅶ〜
第28章 理不尽だよねっ
智くん……何で『オイラは、大切な人を優先したいタイプなんだからね?』って、2回も言ったの?オイラって……
(こんな時、なんて返したらいいの?)
大切な話をしている時は、ただ聞いてくれるだけで心軽くなるものね?私は、だけど……
「俺と母ちゃんを愛してくれてたのは分かる。20代前半の就職したての男が、自分の稼ぎだけで妻と息子を。大変だったろうなっ。て分かる。でも、己の選んだ道じゃん?総合商社の営業だったからさ、良い顧客、成績を掴み取ればさ……夢が大きくなっていったんだろうね?」
「……うん」
涙止まらないよ……
「自ら、単身赴任を希望して。自分の描いた未来を優先して。だから、始めはショックだったけど、2019年。16年間、頑張ったよ母ちゃんは。離婚は辛かっただろうけど、正直『良かった』って思ったんだ。慰謝料とか養育費さ、贖罪のためかな?きちんと出してくれる人でさ。パートなんてしなくてもさ……母ちゃん」
「智くん。前に『母ちゃん、養育費さ、使わないでオイラのために貯めてるっぽい』って……」
「うん。慰謝料は使ってくれて良かったよ。けどさ、通帳をさ慰謝料が振り込まれる日に、ジッ。と、口を真一文字にして見つめる姿をみたらさ……」
「智くんっ」
「ゴメっ、泣いてっ」
堪え切れずに泣いちゃった智くん。
「いいの。泣いていいよ?」
「ありがと。あ、母ちゃんは『智と2人で幸せ』ってさ『オイラも母ちゃんと2人幸せ』でさ!」
「うん。智くんはお母様似だね。他の人幸せを願う、優しい人だもの。お父様の事は心の底では……幸せを祈る気持ちもあったのよね?」
「さすが梨良ちゃんだね。うん。母ちゃん1年半頑張って……2020年9月。結翔ちゃんのお母さんの茉結子さんがさ……理不尽だよねっ」
もう、智くんの涙。心が痛くて。
「何で?結翔ちゃんは良い子よね。茉結子さんも永翔さんも結翔ちゃんと深く愛し合っていたのにっ、理不尽だよねっ」
私も涙が出た……