第17章 *親友*〜小金井慎二〜
香奈side
あたしはふと、教室の窓から外を眺めながら、君の事を思い出していた。
「慎二、おっはー」
「遠野!おはよー」
毎朝、部活の朝練前に挨拶を交わしてた事。
「遠野!俺、好きな子が出来たよ!」
「えっ、誰ー?」
「え、それはちょっと…。えーと…うーん…。」
「あははっ、いいよ無理しなくて。相談なら、いつでも乗るから。」
悩み事や相談も、簡単に打ち明けられた事。
「もう卒業かぁ、早いね。」
卒業の時は、好きな子がいる、とか言ってたくせに、
「遠野…っ」
「…もう、ずっと泣いてたら、目痛くなるよ。」
…あたしのこと、抱きしめながら泣いてた事。
でも、そう言うあたしも、本当は泣いてたんだよ。
あれから一年経って、あたし達ももう高校二年生。
今は別々の学校だけど、メールでのやり取りは頻繁にしていた。
でも、君が…慎二が側にいないと、何かが欠けている気がしてならない。
毎朝の挨拶も、テニスを頑張る姿も、相談事も。
今では挨拶なんてさりげない事も直接出来ないし、慎二が今頑張ってるのはバスケだし、相談事もお互い、少なくなっちゃったね。
親友って、友達なだけのようで、それ以上のような不思議な存在。
でも、今更気づいちゃったんだ。
あたしは、慎二が親友以上のものに思えて仕方ない。
「慎二…好きだよ。」
君に届くはずの無い言葉は、窓から入ってきた風に吹かれて、どこかへ飛ばされてった。
なんで、あの日々のどこかで気づけなかったんだろう。
遠くなった時、ようやく君の存在がどれだけ大きかったのかに、気づかされたよ。