第15章 *Happy Birthday 8/2*〜火神大我〜
「香奈、ありがとな!」
そう笑う大我君は、本当に幸せそうだった。
でも私は、少し複雑な気持ちになってしまった。
私の料理なんて、これに比べたらまだまだだな、って。
いつも大我君が食べてくれてるものなだけに、不安になる。
「…美味しくて、良かった。」
それでも私は、必死の作り笑顔で誤魔化そうとした。
でも、やっぱり、そういうのって大我君には通用しないみたい。
「…なんか、嫌な事でもあったか?」
笑ったはずなのに、簡単に見破られてしまった。
隠し通せないのは知ってたから、観念して正直に話す事にする。
「…嫌な事っていうか…嫉妬、かな。」
「えっ?なんでだ?」
だって、私じゃ、大我君をそんな笑顔に出来ない。
ケーキに嫉妬もおかしいけど、私じゃダメなのかなって、不安になった。
「私の料理も、まだまだだなぁって。」
ちゃんと大我君の顔を見て話がしたいのに、どうしても俯き気味になってしまう。
本当は、こんな事で大我君に迷惑をかけたくない。
でも、慰めてほしい自分もいる。
…我儘だなぁ。
大我君の顔が見れない。
でも、大我君は、身を乗り出して、テーブルの向かい側に座る私の耳元で、言ってくれた。
「俺は、香奈の料理が一番だ。」
「…でも…っ」
「味の問題じゃねーだろ。俺、香奈の愛を感じるから、お前の料理のが好き。」
胸がギュッと締め付けられて、泣きそうになる。
私って単純だな。
大我君の言葉一つで、こんなに嬉しくなる。
「つーか、俺、香奈のチーズバーガーの方が美味しいと思うし。」
「ふふっ、ありがと。でも、ダメだよ。せっかくここのケーキ食べてるのに、他の料理褒めちゃ。」
「別にいいだろ。だって事実だし。」
お互いに見つめ合って、それがなんだか可笑しくて、二人で笑った。
*Happy Birthday 8/2*
明日も、明後日も、この先も。
君への愛を、
毎日届けるね。