第14章 *Happy Birthday 7/29*〜笠松幸男〜
最初に話したのは、たまたま廊下でぶつかった時。
バスケ部は見に行ってたけれど、先輩は私を、黄瀬ファンの一人としか見てないのだと思っていた。
でも、先輩は、私の事を知ってくれていた。
「わ、悪いっ!
…あ、お前、いつも部活見に来てる…よな?」
遠慮がちながらも私に話しかけてくれた時は、すごく嬉しくて。
それがきっかけで、先輩に抱く思いは、『憧れ』から『好き』へと変わっていた。
告白したのは、IH直後。
私のどこかでは、負けてしまった先輩への励ましのつもりでもあったのかもしれない。
でも先輩は、とっくにその壁を乗り越えていた。
それでいながらも、私の事を好きだと言って、付き合ってくれた。
その時はすごく嬉しかったし、それは今だって変わらない。
先輩の彼女でいれるのが幸せすぎて、毎日大好きって言っても足りないくらいだ。
「あ…着いたな。…えっと…その、じゃあな。」
私のクラスの教室前に着き、先輩は背中を向ける。
その背中に、後ろから抱きついた。
こうしてみると、結構男子って抱きしめづらいんだなって分かる。
「遠野、な、何やって…!」
「大好きです、先輩。」
それが言いたかっただけです、と笑いながら、先輩を離す。
振り向いた先輩の顔は真っ赤で、でもどこか嬉しそうだった。
「…俺も。じ、じゃあ、もう行く…ま、またな!」
自分の言動とか、された事に恥ずかしくなったのか、必要無いのに駆け足で去って行く先輩。
それを見送った後、私はふふっと笑って教室に入った。