第11章 *恋の計算*〜伊月俊〜
伊月side
「伊月先輩〜っ!」
「ん?どうした?」
昼休み、教室へ戻ろうと廊下を歩いていると、後ろから抱きつかれる。
聞こえたのはもちろん遠野の声。
いや、癖なのは分かるけど、あんまり人前で抱きつかれるのはなぁ…。
っていうか、まずそういう事されるのが恥ずかしい。
増してや遠野相手。
心臓に悪い。
「…大変な事になりました。」
そんな俺に気づくはずもなく、遠野は落ち込んだ声色で続ける。
「そうなのか?…はっ!大変だ、変な鯛だ!キタコレ!」
「相変わらず、ダジャレ言う時は生き生きしてますね…。」
いや、実は今でもかなり緊張してるんだ。
ただ、つい反射的に本能が…
あ、本能が反応?
キタコレ!
…とにかく、遠野の前だと俺が俺らしくなくなる。
そう考えると、さっきのダジャレは、いつも通りに反応できた気がする。
取り敢えず、ダジャレ好きで良かった。