第7章 *さくらんぼ*〜緑間真太郎〜
「取っちゃダメって言ったのにー。」
「…」
無言になる真太郎の顔を覗き込むと、いきなりキスされる。
不意打ちに最初はよく分からなかったけど、後になってわたわたと慌ててしまった。
「…あまり近い距離にいると、またするからな」
「し、真太郎が積極的!?」
いつもはこんな事無いのにな。
でもまぁ、嬉しい事に変わりはない。
「…ふふっ。」
「何なのだよ。」
可愛い一面あるじゃん。
なんてのは口に出さず、
「さくらんぼが羨ましいなって思っただけだよ。」
些細な嘘を吐いて、誤魔化す。
「羨ましがる事なんてあるか?」
「だってさ、人に引き離されない限り、ずっと一緒でしょ?」
茎一本なんて、脆い繋がりかもしれない。
でも、それでも確かに繋がってる。
それが、目に見えてる。
そんな関係が、何と無く、いいなぁって思っただけ。
なのに真太郎が、
「俺も、お前から離れる気はない。例え引き離されそうになってもな。」
なんて言うから、
「ん…わ、私も…だよ。」
恥ずかしくて、真太郎に抱きついて、真っ赤な顔を隠した。
*さくらんぼ*
偶然繋がった、さくらんぼ。
でも、『好き』って気持ちに、
偶然なんかないよね。