第7章 *さくらんぼ*〜緑間真太郎〜
香奈side
「あ」
「?」
一言ずつだけの、変な会話になる。
それを先に終わらせたのは、真太郎だった。
「どうかしたのか?」
北海道にいる両親からのお土産としてもらった、大量の野菜や果物。
そのうちのさくらんぼを真太郎と食べている時、ちょっと嬉しいことがあった。
「見て見てっ、このさくらんぼ、繋がってる。」
一つの茎で繋がった、二つの実。
絵で書くようなさくらんぼだった。
「特に珍しいというわけでもないだろう。」
「えーっ。真太郎、無愛想だなぁー。」
そこはもうちょっと何かコメントしてよ。
『俺達みたいだな』とか乙女ゲームみたいな展開は求めてなくても、会話はしっかり繋いでほしい私としては、文句を言うしかない。
「それは間違ってるのだよ。」
「何が?」
今の会話のどこに、そんな真面目な顔して訂正するような間違いがあったのだろう。
真太郎を、よく分からないという視線で見つめてると、
「お前に愛想を尽かした事は一度も無いのだよ」
別段照れる様子もなく、さらっとそう言われた。
その言葉に、私の方が照れる。
いやいや、無愛想って言ったら、態度がそっけないって意味もあるから。
間違ってないけど、それが真太郎なりの、精一杯の好意の伝え方なのかもしれない。
そう思うと、何だか可愛く思えた。
私はすっかり上機嫌になって、さくらんぼの実を真太郎の前に出す。
「真太郎、一個食べて。あ、実だけ取っちゃダメだよ?」
意味が分からない、というような顔をしながらも、一つ口に入れる真太郎。
それを確認して、私ももう片方を口に入れる。
おお、恋人っぽい!
かなりの至近距離で笑顔を見せると、真太郎はふいっと視線を逸らす。
そして、もう終わりと言わんばかりに、茎からさくらんぼの実を取り、そのまま普通に食べ始めてしまった。
しょうがなく、私も普通に食べる。