第5章 *見た目よりも*〜黄瀬涼太〜
三ヶ月後、私達はお互いの委員会や部活、私の場合は校外学習の準備が忙しいのもあって、話す機会も減り、それに伴い会う機会さえ減った。
学年も違うから教室のある階も違うし、廊下ですれ違うなんて全くと言っていいほどなくて。
「…はぁ。」
一人ぼっちってわけじゃないのに、孤独な気がした。
涼太…会いたいよ…。
私の気持ちを表すように、ポツポツと降り出す雨。
いつの間にか外は曇っていて、教室内は暗かった。
にわか雨ではないらしく、ザー…という音が授業中もずっと続き、その音はまるでノイズのようだった。
放課後は、常備していた小さな折りたたみ傘をさして、一人で帰った。
ここ最近はこれが日課。
天気のせいもあってか、憂鬱になる。
前は涼太の傘に入った事もあったっけな。
涼太の傘は大きくて、二人分入ったよね。
二人で傘を持つ手が自然に触れてあったかかった。
「涼太、寒いよ…っ」
今すぐ来て、抱き締めて。
ダメだ、やっぱり私は欲張りのままだ。
こんな私じゃ、ダメかなぁ…
「ダメなわけ、ないじゃないっスか。」
背中に伝わる、濡れてても分かる温かい体温。
抱き締められる感覚。
会いたくて仕方がなかった涼太が、後ろにいた。
「今まで言わないでいたけど、不安にさせたなら言うっス。」
そう言って、一つ深呼吸をする涼太。
「俺、こう見えて緊張してるんスよ?抱き締めるのも、名前を呼ぶのも、一緒にいる時さえ、ずっと。だって、俺の大好きな彼女だから。」
今まで気付かなかった心臓の音が、背中越しに伝わる。
ああ…私、何で不安になってたんだろう。
涼太はこんなにも、私を愛してくれてるのに。
抱き締めるのは、顔が見られたくないから。
余裕そうな態度は、緊張を隠すため。
先輩と呼ぶのは、名前呼びが恥ずかしいから。
涼太は大人びているように見えて、私が思ってる以上に、まだまだ子供で。
それは、一人で不安になってた私も同じだ。
「涼太…愛してる。」
「俺もっスよ、香奈っち。」
雨の音に掻き消されて誰にも聞こえない声が、二人にだけ聞こえる。
体が離されて、目を閉じれば、涼太の温もりを感じれた。
*見た目よりも*
私の彼氏は、
見た目よりも恥ずかしがり屋で、
少し不器用でした。