第3章 *Happy Birthday 5/18*〜日向順平〜
「なっ…お、お前、何言って…っ!」
ま…
間違えた…!?
どうしよう、まだ、まだダメだ…!
どうにかして誤魔化さないと、と考えて、とっさに出た言葉が、
「…なーんて、冗談ですよ!どうですか?ビックリしちゃいましたかー?」
だった。
…良かったのかな、これで。
もちろん、好きは冗談なんかじゃない。
でも、今はまだいきなり過ぎた。
…まだ返事を聞くのが怖いだけなのも、理由の一つだけど。
「言いたいのはそうじゃないんです。…先輩。」
「な、何だ…?」
「…お誕生日、おめでとうございますっ!」
勢いよく言い切り、プレゼントを前に突き出す。
「…誕生日?」
「はい、今日は先輩の誕生日でしょう?」
良かった、渡せた。
きっと先輩、喜んでくれるだろうな。
「…中身、見てみてください。」
「お、おう…」
誕生日の事はすっかり忘れてたらしく、恐る恐る包み紙の中を見る先輩。
「…これって…
期間限定の、フィギュア!?」
「これ探すの、大変だったんですよー。まぁ、最終的にゲーセンで手に入れたんですけど。」
先輩は驚いた後、それをしばらく見つめていた。
その目は輝いてて、まるで子供みたいと思ってしまう。
「…香奈、ありがとな。」
「へっ!?あ、は、ハイ…?」
フィギュアに夢中だと思ってたら、突然の笑顔。
不意打ちはズルいと思いながらも、嬉しかった。
「…その、これからする事、なかった事にしろ。」
「?それってどうい…っ」
先輩の匂いがして、唇が温もりに包まれる。
それは長い間かもしれないし、短かったかもしれない。
よく分からないけど、先輩の顔が目の前にあって、それで…
「香奈…俺、さっきのお前の告白が嘘でも、お前が好きだ。だから…俺と、付き合って欲しい。」
「…も、もちろん…ですっ…!」
*Happy Birthday〜日向順平〜*
おめでとうと共に伝えた言葉。
この日はきっと、
これからも、特別な日のままで。