第22章 桜井良 Special Story*
その言葉に驚いて、反応ができなくなってしまう。
「…おい、何か反応しろ。」
「す、すいません!いや、その、僕の言葉に影響されたりしなくても、僕の言葉なんてどうでもいいですから、青峰さんは青峰さんらしく生きてください!」
「俺の人生決めつけんな!人の言葉に影響されることくらいあるわ!」
「すいません、すいません!こんな僕が人の人生決めてすいません!」
すっかり混乱してしまって、とにかくいつもの癖で、頭をペコペコとさげる。
それにため息をついて、青峰さんはまた、何かを思い出すように空を仰いだ。
「…でも、今回のは良に言われなくても、思ってたことなんだ。ここにいても変わらない。変わりたくても自分でできないなら、誰かすげーやつ探さなきゃダメだって。」
「そのすげーやつがいなけりゃ意味ねぇけどな」と呟く青峰さんの目には、それでも少し、期待してる様子があった。
「い…今はまだ無理ですけど。」
「ん?」
僕が話し始めると、僕の方に視線を向ける青峰さん。
僕も青峰さんの方をしっかり見て、話を続けた。
「僕の目標は青峰さんです。今は全然届きません。僕よりも青峰さんに追いつく可能性がある人は、何人もいます。それでも…
僕は、この三年間で青峰さんに追いついて、越えます。」
僕の言葉で青峰さんを変えるつもりはない。
僕より先に青峰さんに追いつく人はいると思う。
何番目でもいい。
特別じゃなくてもいい。
僕は、絶対に青峰さんを越すと、そう決めたんだ。
「…そうか。」
「はい。」
青峰さんは、しばらく黙り込んだ後、笑みを浮かべて言った。
「やってみろよ。口で言うほど楽じゃねぇぞ?死ぬ気で来い。」
「…!はい!」
九月の、まだ暑さが残るような日。
僕は、君を越えると決意した。