第22章 桜井良 Special Story*
九月の、まだ暑さが残るような日。
僕はいつも通り、お昼ご飯の時間に、屋上へと足を運んでいた。
そのドアを開いて、青峰さんの寝そべる場所まで歩いていく。
「青峰さん、お弁当持ってきましたよ。」
「おー、良か。って、さつきいねぇの?うるさくなくていいけどよ。」
「桃井さん、他の人と食べるって言ってました。」
いつも三人でここに来ているので、桃井さんがいない今、ここにいるのは僕たちだけだった。
他の生徒たちは、「屋上には興味があるけど、いつも先約がいるから行きづらい」という人が多く、人が来ることは少ない。
「あっそ。別に理由なんて、どうでもいい。」
「よ、余計なこと言ってすいません!!どうでもよくてすいません!!」
「そこまで言ってねーよ、バカ!謝んのやめろ!」
すぐ謝り始めてしまう僕にそう言って、青峰さんは僕が持っていたお弁当箱を乱暴に取る。
だけど、青峰さんの言動一つ一つは乱暴に見えても、実は優しいと僕は思っている。
「謝んのやめろ」と言ってくれるのも、自分に自信を持てない僕を変えようとしてくれてるのかもしれない。
もしそれが勘違いでも、僕は嬉しかった。
「ん、今日の弁当もうめーな。昼飯食う時は、暇しなくていいわ。」
「確かに、ほとんど屋上にいたら退屈、ですよね…。うわぁぁ、違うんです、屋上にいることが悪いとか言ってるわけじゃ…!」
いや、本当は授業も出た方がいいし、部活も出てほしい。
けど、考え方は人それぞれだ。
僕が青峰さんの気持ちを理解できていないのに、それを否定はできない。
でも、青峰さんは、青空を仰ぎながら、意外にもこう言った。
「…別にいい。ここにいても変わんねぇのは、分かってんだ。」