第21章 *りんご飴*〜森山由孝〜
その言葉が、ただただ嬉しかった。
ずっと、見てるだけだったから。
ずっと、片想いだったから。
それを求められてるなんて、夢みたいだった。
「香奈ちゃん…。」
「ん…。なん、ですか?」
「泣いてる…?」
本当だ。
私…泣いてる。
幸せだとは思ったけど、泣いちゃうほどなんて。
私って、涙腺弱いのかなぁ。
「それ…嬉し涙ってことで、いいんだよね?」
「うん…っ。い、いよ…。」
森山君の手がそっと離れる。
私は、振り向いて森山君に抱きついた。
森山君も、そっと抱きしめてくれる。
「森山君、好き…。二年前からずっと、好きでした…!」
「ん…。俺も香奈ちゃんのこと、去年からずっと好きだった。」
私は、森山君が言った「去年から」って言葉に、驚きを隠せなかった。
だって、森山君にとって私は、初対面だと思ってたから。
「知らなかった?俺、去年香奈ちゃんに一目惚れしたんだよね。すげー笑顔が可愛くてさ。」
…そうだったんだ。
想った時間はそれぞれ違っても、私たち…両想いだったんだ。
「俺、香奈ちゃんにたくさん迷惑かけるかもしれないけど…。絶対、一生好きでいるから。俺と付き合ってください。」
「私も、なかなか自分の気持ち言えないかもしれないけど、ちゃんと森山君のこと好きでいるから…。私でよければ、付き合ってください。」
その言葉を言い終えた後、私たちは、そっと唇を重ねあった。
それは、不思議とあったかいキスだった。
「……。」
「……。」
「キス…しちゃいました、ね。」
キスの後の沈黙に余計恥ずかしさが募って、何か言ってごまかそうとした。
それでもやっぱり、ドキドキは止まらない。
「…やっぱ、可愛い。」
「可愛い」って言葉に、泳がせていた視線を森山君に向ける。
何度聞いても、その言葉は嬉しかった。
「照れすぎでしょ。」
図星なことを言われてしまって、更に顔が赤くなる。
でも、そう言う森山君の顔も真っ赤で、りんご飴とおんなじ色だって、そう思った。
*りんご飴*
君との恋は、
甘くて酸っぱい、
りんご飴のような恋でした。