第3章 *Happy Birthday 5/18*〜日向順平〜
香奈side
「せ、先輩…」
「ん?」
「…やっぱり、何でもありません!」
さっきから、何度同じようなやり取りを繰り返しただろう。
二人きりの帰り道、あたしは、どうしても言えない一言に落ち込んでいた。
今日は、日向先輩の誕生日なのに。
おめでとうございますって言いたい。
でも、プレゼントは家にあるし、先輩は覚えてないようだし。
どう切り出せばいいのか分からなくて、無言になってしまう。
「どうしたんだよ、元気ねーな。」
「そ、そんな事ないですよ!?」
「あるって。何かあったか?」
あたしの顔を覗き込むようにして、先輩は私と目線を合わせた。
「ち、近い…です…っ」
「今更何言ってんだよ。お前はそういうの気にしないだろ?」
多分、普段は先輩に抱きついて離れないからだろう。
…でも、あたしなりに緊張してるんですよ?
だってあたし、先輩が好きだから。
「…あたしだって、女子ですよ。」
「あー…そうだったな。」
「ひ、ひどい!今すごい傷つきましたよ…。」
ただでさえ落ち込んでたのに、とどめを刺された気分だ。
「なっ、何で泣きそうになってんだよ、だアホ…。冗談だっつーの。」
あたしの表情を見て焦った先輩は、あたしの頭をポンポンッと撫でてくれた。