第1章 追憶
それでも私は、私たちは戦わなくてはならなかった。
誰かにいつかほめてもらえる日はくるのだろうか。
この曇天から救われる日は来るのだろうか。
「……、もう、嫌だよぉ…。」
私は一人、男たちから聞こえないところで、雨に濡れながらそうつぶやいた。
頬に何かが伝っていく。
それが涙なのか、雨なのか。はたまた血かもしれなかったが、それは確認しなかった。
―――――こんな弱気なところを見られてはいけない――――
見られてしまったら、きっと「ここから去れ」だの、「お前は女だから」だのとみんなから言われるから。
だから、私は男にならないといけないのだ。
だって、私がここから、あの馬鹿四人の元から去ったって、私には行くあてなどないし、ましてや仲間を置いてきぼりにはできない。
だが、頬に伝っているのがだんだん涙だとわかってきた。
雨に濡れているのに頬が熱い。いや、体が熱いのだ。
そういえば、最近は雨が多かった。雨の中殺戮をしていた。
でも、雨に打たれたかった。
自分だけ雨に打たれないなんて、不公平だ。
「ふ、ふふふふふ…。」
おかしい。もう、何かがおかしい。
何も見えない。ぼんやりしている。
「もう……、なんだかいいやあ!」
そのあとに何を言ったのかは覚えていない。