第3章 確信
響也side
三上が予定通りに治療を終え、リハビリの病棟へと移ったのは1ヶ月程経ってだった。
顔の腫れも引き、元通りになって来ていた。
医者も驚いていたが、三上は鏡を見ることに拒否するようになった。
入院して1ヶ月経つというのに三上の両親は一度も顔を見せなかった。
「調子はどうだ?」
「変わらない。……あのさ。」
いつも通りに見舞いに来ていた俺に三上が顔を背けて話しかけた。
「……何で毎日来んの?別に家族でもない、赤の他人なのに。」
「同居人だから。あと、クロも寂しがってる。」
「ただの同居人じゃん。クロはまぁ……俺も会いてぇけど。」
三上は少しずつ身体を動かせるようになって来ていた。
動かせなかった腕も動くようになっていた。
右手を自分の頬に当て、摩る。
「……聞かねぇの?」
「……何を?」
「分かってるくせに。……何で帰らなかったかとか、何があったのかとか。聞きたいことあるんだろ?だから毎日来てるんじゃねぇの?……警察だもんな、あんた。」
勿論聞きたい。
でもそれは警察としてではない。
俺自身が知りたい。
「いや、警察の俺じゃなくて俺自身が知りたい。でも無理に話さなくていい。今は自分を大事にしろ。」
「そっか。」
そう言うと、三上は俺の方を向いた。
辛そうな顔をしていた。
今にも泣き出しそうだ。
顔の傷が痛々しい。
「じゃあさ、佐野響也として聞いてくんない?」
「わかった。」