第3章 お前も一緒に来るか?
國神は食いつくように聞く。
「逸崎の兄貴って、何のスポーツやってたんだ?」
「いや?そこまでは聞いてない。でも、兄と父親がかなりスポーツ好きで、だから使ってるものも自然と覚えた…って……てか國神氏、逸崎さんと仲良かったら、直接本人に聞けば良いんじゃない?」
「!。そ、そうだな…」
チームメイトに言った言葉をそのまま返されて、ぐうの音も出ない。
その様子を見て、女子マネはピンと来る。
(あ、もしかして國神氏。ははーん、なるほど。
・・・・・・・
そういうことね)
事情を察した。
本屋で用事を済ませて、時間は5時頃となった。
(沙織さんが帰ってくる前に先に家に戻った方がいいよな)
逸崎は自分のスマホの時刻を確認して思う。
住まわせてもらっている身としては、ご飯作りは極力私がやることにしている。
母親がいなくて、父と兄3人で生活してきた分、洗濯や料理はひとしきりできるようにはしてきたからだ。
(ここの1階にあるスーパー、何か安売りしていたら買っておこうか)
沙織さん結構飲むからな。アサヒスーパードライ多めに買い置きを……あ、未成年だから無理か。
つくね串とかミニスイートポテトとか、沙織さんが好きな弁当のおかずも買っておくのもいいかもな。
朝ごはん用のホットケーキミックスの素も、値段見ておこうか。
ゼリー飲料も買い溜めしておこう。
逸崎はそんなことを思っていると、男子が声を上げて、ゲーセンコーナーの方を指差した。
「せっかくだから皆でプリクラ撮ってシメにしようぜ」
他のサッカー部や女子マネも「いいねいいねー」と乗り気で歩いていく。
「逸崎さんも一緒に行こうよ!」
「……わ、私は…遠慮しておく」
逸崎は一歩引き気味で言う。
「私、サッカー部とは関係無いし……」
「いいじゃん遠慮しなくていいんだよ。せっかくだし思い出作りにでもさぁ!」
女子マネの1人が手招きして優しく誘導するも、逸崎は自身のネックウォーマーに触れる。
「でも……」
本当は空気を読んで一緒に行くべきだけど、でも……
スッ
「!」
逸崎と女子マネの間に、國神が入ってきた。
「悪ぃ。今日は俺もやめとく。そっちで楽しんでくれ」
サッカーする時とは違うパスをした。