第3章 お前も一緒に来るか?
否定しないってことは、本当は行きたい気持ちもあるという証拠だ。
でもそれ以上に邪魔する気持ちもある。だから黙り込んでしまう。
拭うには、背中を押してくれる友達からの寄り添う言葉や助言が必要だ。
國神もかつて、友達になりたくても周りが怖がって近付いてくれない経験もしてきたから、
仲良くなりたくてもできないもどかしい気持ちは、よく分かっていた。
だから恥ずかしがることなく、進んで逸崎を誘う。
「それに関係無ぇわけでもねえだろ。経験者のお前が来てくれれば、色々と参考になるかもしれねえし。俺じゃなくても女子同士なら話しやすいこともあるだろ」
「……」
東京含めた関東圏内では、スポーツを含めて、他の県よりも施設や環境がより整っている。
そんな場所でやってきたキャリアがあるなら、秋田の田舎に比べたら知識的にも彼女は秀でていると、國神は考える。
実際に彼女の昨日の冷静なプレーを見たから、より納得できる。
それに女子マネ達ともサッカーの話題で盛り上がるはずだと期待もあった。
「……」
しかし逸崎は簡単に首を縦に振らない。
肩にかけているスクールバッグの肩掛け紐をギュッと握りしめる。
「私、今、サッカー全然やってないし、それに、女子がサッカーやってたって、側から聞けばあまり良い印象じゃないし……また迷惑かけるかもしれない」
「!」
ああなんだ。そういうことか。
國神は理解する。
逸崎は昨日のようなトラブルになるのが嫌なんだ。
校内ならなおさら、好奇な目で見られて目立つようなことは避けたい。
そしてまた庇ってもらって、誰かを巻き込みたくない。
だから、サッカーをしていたことを、周りにあまり知られたくないのだ。
國神は頭で整理すると、一息つく。
(……まあ、逸崎の為っつーより、
・・・・・・・・・・・・
俺のエゴでもあるんだがな)
自分の首に手を当てて目を合わせず、その気持ちを口で表す。
「……もちろんお前が良ければの話だが、俺はサッカー抜きでもお前に来て欲しいんだが」
「!」