第5章 5夜
(今ならまだ、、、何も無かった事にできるはず。)
とりあえず話しをしようと千切君の背中に腕を回しトントン、と背中を叩くと
突然、上下が反転した。
『えっ⁈わっ、、』
千切君の上に私が覆い被さるような体制になってしまい、慌てて退こうとするもガッチリ腕を回されて動けない。
「モカ、潰れそうだったから。」
『・・・でもこれじゃ千切君が潰れちゃうよ?』
「潰れねぇって。モカ、軽いし。」
そう話すと、千切君は顔に掛かった髪をそっと耳に掛け直してくれた。
そんな些細な仕草も彼がやると何だか艶っぽく見える。
『あのさ、、、私から一つ提案してもいいかな?』
「え、また変な事言うなよ?」
『違っ、、そういうのじゃなくて……。
残りの時間、こうして話すだけじゃダメかな、って思って。
あ、でもこれはあくまで私からの提案だから嫌なら嫌って言って?』
「・・・・いーよ、それで。むしろその方が良い。」
意外にもあっさりと受け入れてくれた。
良かった、とホッとしていると千切君は話しをするならこっちの方が良い、と腕枕をしてくれた。
のだけど、、、、
ーーーーーそれがどうにも落ち着かない。
『腕枕されてる……。しかもお互い服着たままだし……』
服、と言っても私はバスローブで千切君はスウェットだけど。
普通の恋人同士ならよくあるこんな光景も、私にしてみればエッチな事をするよりレアな事で。
慣れない事をされてるせいかソワソワしてしまう。
(なんかこれじゃただイチャついてる恋人みたい…。)
「脱ぎたきゃ脱げば?俺は構わないけど。」
『・・・・そういう事じゃなくて。』
ムッと眉を顰めると千切君は「嘘。」と優しく目を細め頭をポンポンと撫でてくれた。
その手付きは心地良いほど優しい、、、、