• テキストサイズ

ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第9章 【例えこの先に何があっても】


 夕方から夜のとばりが下りるにかけて、だんだんと静かに陽が沈んでいく。これからどんどん寒くなることを考えると、マルフォイ家の屋敷から冬用のマントを持ってきておいて正解だった。
 北風が厳しい林の中で、クリスと同じように旅行用のマントに身を包んだドラコは、棒立ちのまま周囲を見回していた。

「……林だな」
「ああ、林だ」

 ありのままの風景を口にすると、何故かどこからであろう、ヒュ~と冷たい風が吹いた。

「それでクリス?ここはどこだい?」
「……最後に、ハリー達と別れたところだ」

 言い切ったその刹那、「無」が生まれた。その時間も感情も意思さえもない「無」が一瞬で去っていくと、ドラコが怒りで眉毛をピクピクとじれったそうに動かし、3秒後には大爆発を起こした。

「知っていたけど、やっぱり君はバカだ!見ろ、ポッターどころか人っ子一人いないじゃないか!!と言うか、離れ離れになった場所に、何週間も滞在しているわけがないだろう!?」
「うるさいな!仕方がないだろう、他の手がかりなんてないんだから!!」

 長い長い時を経て、やっとお互いの恋愛感情が行き交ったように見えたが、そんな2人がたどり着いたのはホグワーツ入学前のおこちゃまな喧嘩友達という関係だった。
 因みに、あれからどうやってここに来たのか。それは少しばかり時間をさかのぼる。

* * *

「ドラコ、お前今、す……好き、って……」
「う、うるさいな!僕は事実を口にしただけだ!君だって僕を愛してるって言ったじゃないか!」
「あ、あれはっ、その、その場の勢いと言うか何と言うか……」
「君はその場の勢いで他人に愛してるなんて言うのかい!?」
「そんなわけないだろ馬鹿!」
「煩い、馬鹿なのは君の方だ。この大馬鹿者!!」

 ベラトリックスを倒した直後だというのに、2人が最初にやったのがこの幼すぎる口喧嘩だった。
 初心に帰ったというとそれっぽく聞こえるが、残念なことに2人の間にあるのはただの照れ隠し合戦だ。その証拠に、2人とも耳まで真っ赤にして、荒っぽい息を上げている。

「そうだ!こんなことしてる場合じゃない!!ベラトリックスをどうにかしないと!」

 最初に正気に戻ったのはドラコだった。つられてクリスも正気に戻る。

/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp