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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第1章 Last summer vacation~Harry~


「凄い!!これすごく良いヤツじゃないの!?本当にこんなのもらって良いの?」
「何を言ってるんだ、ハリー?今回の旅はホグワーツ校内じゃない!灼熱の大地や、絶対零度の氷の世界に赴く可能性もある。何事も準備に越したことはないだろう?」

 そういうクリスの瞳からは、まるで初めての旅行を夢見る子供のような熱と勢いが感じ取れた。
 とても死地に向かう顔ではない。本当にホグワーツの外で展開する冒険に胸をワクワクさせている。

 自分と同じくヴォルデモートに運命をねじ曲げられ、その命さえも狙われている者とは思えない明るさと余裕。
 そして無限に涌き出る楽観性。彼女の一番の魅力は麗しい外見ではなく、これらなのかもしれない――。


  ――あぁ本当に、本当にまいった。
  ロンではなく、
  ハーマイオニーでもなく、
  クリスの魅力にハリーは強く心を打たれた。


 もらったブーツの包み紙を胸に、しばし星空を覗いていると、いつの間にかクリスはスッと背筋を伸ばし、さらに夜空の星をつかむように手を大きく広げた。

「……何してるの?」
「いや、こうしていると本当に星に手が届きそうな気がしないか?」

 そうだ、この夜空のどこかには父さんがいて、母さんがいて、ムーディとヘドウィグがいる。そう考えたら、ハリーも自然と背筋をスッと伸ばし、腕はスニッチを掴むように星夜に伸びていた。

 クリスとだったら、本当にワクワクするような冒険の旅が出来るかもしれない。
 大好きな宙を包むように広げたクリスの手に、ハリーの手がゆっくりと近づき、2人の手が1つに重なると、静かに、そして固く握り締めあった。

「行こうクリス、どこまでも!」
「ああハリー、一緒に行こう!」

 ドクン、ドクンと握りしめた手を介して、鼓動が重なる。そしてそれは手を伝い心臓へ届いた。


 ――さあ、はじまる。
     ここから、君から始まった僕の物語が
           また、ここから始まるんだ――

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