第8章 【相思相愛】
悔しいほどチンケな『人さらい』に拘束されたクリスとルーナが連れて行かれた先は、よりによってマルフォイ邸だった。
大きな門の所には門番の様な大男が2人おり、クリスの記憶が確かなら、確かクラッブとゴイルの父親だ。
とは言っても、マルフォイ家のパーティでいつもチラッと顔を見ただけで確信はないが。
「人質を2人連れてきた、その内1人は例のクリス・グレインだ!!」
それを聞いたクラッブとゴイルの両親はクリスの顔を覗き込み、指名手配犯のポスターとクリスと照らし合わせ、本物だと分かると慌てて門を開けた。
マルフォイ邸は門をくぐったら、暫く馬車道の様な長い道が屋敷まで続いている。
その道をルーナと歩きながら、クリスはこの場を――いや、この先に待っている最悪の事態を想像した。
この屋敷にヴォルデモートが居るのだろうか?となると、即死ということも考えられる。
死ぬ時の気分はどんなものなのだろうか。……いや、そんな事はどうでも良い。せめてルーナだけでも助けなければ。でなければラブグッド氏にも申し訳が立たない。
しかし残念ながら、良い案も浮かばないまま屋敷の入り口まで来てしまった。
クリス達を捕まえている『人さらい』がドアノッカーを叩き、大声を上げた。
「おい!人質を連れてきたぞ!それも1人はクリス・グレインだ!!」
大声に反応したのか、屋敷の入り口が途端にバタバタしだした。まさかA級手配犯であるクリスが……そして長年家族同然で一緒に暮らしていたクリスが『人さらい』に捕まった。
それはマルフォイ家にとって朗報でもあり凶報でもあった。
「ほら、さっさと歩け!」
扉が開くと、調子に乗った『人さらい』がクリスの背中を蹴った。その拍子にクリスが転ぶと、女性の短い悲鳴が聞こえた。