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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第4章 【果てしなく続く青空】


「……先生、私は……私は、例のあの人の娘です!」

 今まで誰も言わずにいたその言葉に、その場にいる全員の胸の奥を貫いた。気が付くと、クリスの目から大粒の涙がポタポタ零れ落ちていた。
 きっと先生は、この言葉だけで全て分かってくれるだろう。それでも、決壊したクリスの涙腺からは涙がとめどなくあふれ続け、止まるという事を知らなかった。

「……確かに、確かに辛い時もありました。でも今は幸せだって心から言えます!そんな私が言うんです、ルーピン先生!幸せになることに、血や生まれなんて関係ないんです!!」

 クリスらしからぬ涙の大絶叫の後、再び空気がシーンと静まり返った。
 その静寂の中、一足先に我に帰ったのはクリスだった。クリスはハッとなると、ルーピンの傍から勢いよく離れた。

「すすすす、すみませんルーピン先生!」

 いつも通りパニックになったクリスがあわてて頭を下げると、涙と鼻水をふき、興奮による熱が下がるのを待った。
 するとそこにルーピン先生がクリスと同じ目線になるよう、微かにひざを曲げた。

「すまないね、情けない姿をさらしてしまったみたいだ」
「い、いいえ、そんな事ないです!でも!!」
「でも?」
「先生は自分のために、もっと幸せを願っても良いと思います」
「……自分のために、か。もうそんな感覚忘れてしまっていたよ。だからありがとう、腑抜けた僕のために怒ってくれて」
「いいえ、わ、私の方こそ生意気を言ってすみませんでした!!」

 するといつもの様に顔を真っ赤にして、クリスはハーマイオニーの陰に隠れてしまった。その様子を見て、その場の全員が笑った。

「どうだろう、リーマス。胸躍る冒険は若者に譲って、老兵は潔く去る方が良くないか?」
「去っては駄目だろう、シリウス。この無鉄砲な若者達の旅が順調に行くよう、初代悪戯仕掛人の我らが見守っていないと」

 その時、ルーピン先生がいつもの柔和な感じではなく、年頃の男の子と見まごうくらいシリウスと一緒になって明るく笑った。
 それを見て、クリスはくすぶっていた胸に再び火が灯るような心地がした。

 好きで、好きで、大好きで、ずっとずっと想い続けてきた人は、他の人と結婚してしまった。
 けれどこの想いは一生続くだろう。果てなく続く青空の様に――。

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