第24章 【失われた髪飾り】
シュルシュルと、ハリーは薄暗い床を這っていた。ほこりが少し積もったこの部屋には暖炉とベッド、そして壁と言う壁に獣の引っかき傷が沢山付いていた。
恐らくここは叫びの屋敷の中だろう。暖炉の傍には肘掛け椅子が置かれており、ハリーはその椅子にゆっくり近づいて行った。
「……ナギニよ、俺様は間違っていたのかもしれん」
ナギニと呼ばれた事に、ハリーは全く抵抗を感じなかった。頭の中では自分の名前はハリー・ポッターだと認識しているのに、肉体が自分をハリーではなくナギニだと肯定していた。
ハリーは鎌首をもたげると、肘掛け椅子に座っている主人の手の甲に甘えるように顎を乗せた。ハリーは自分では信じられなかったが、どうやら再び自分がナギニになっているらしい。
ハリーはこの夢から必死に目覚めようと試みたが、もう一方で、ヴォルデモートの間違いについて聞き出せるなら聞き出してやろうと思った。
「宿命の杖、死の杖、最強の杖……俺様の手にあるのは間違いなく、そう呼ばれてきた唯一無二の杖だ。なのに、何故俺様の意に反する……やはり持ち主を誤っているのだろうか」
持ち主を誤っている?どういう事だろう?――とハリーが思ったとたん、真っ白いダンブルドアの墓が暴かれるヴィジョンが脳裏に奔った。
(そうか、こいつはダンブルドアの墓を暴いて――っ!!)
ハリーが激しい怒りに駆られると、耳鳴りと激しい頭痛に襲われた。もしかしたらハリーの感情が高ぶりすぎて、ナギニと波長が合わなくなった所為かもしれない。
ヴォルデモートの弱みを握る為、どうにか感情の高ぶりを抑えると、やはり頭痛も耳鳴りもなくなり、ハリーは再びナギニとシンクロし始めた。
「ならば過ちを正さねばならぬな、ナギニよ。いち早くこの杖の真の持ち主であるスネイプを殺さなくては」
その言葉を聞いた瞬間、ハリーは先ほどとは比べ物にならないくらいの耳鳴りと頭痛によって、強制的に目を覚ました。
「まずいぞ……スネイプが殺されたら、最強の杖の真の持ち主がアイツになってしまう!!」
それだけは絶対に避けなければならない。ハリーは包まっていた毛布を脱いで急いでアジトを出た。
日はまだ昇ったばかりだが、今日で約束の3日目だ。こうしてはいられないと、ハリーはオリバンダーさんの店まで全速力で走った。