第24章 【失われた髪飾り】
「で、でも、おばさんは望んでここに残ったんじゃないんですか?」
「アーサーと話し合ってそう決めたのよ。あの人ったら何て言ったと思う?『戦いが終わったら、君の作ったシチューが食べたいから、家で待っててくれ』って。私、その言葉を聞いた瞬間、可笑しくてつい思わず笑っちゃったわ」
そう言って笑いながら、ウィーズリーおばさんは笑顔のままポロポロと涙を流し、あわててエプロンの裾で涙をぬぐった。
「私のシチューが生き甲斐だなんて言われて、とても嬉しくて、とても苦しくて……。でも私は夫の言葉を信じて待つ事にしたの。家族みんなが帰って来た時に、鍋いっぱいに作ったシチューを食べてもらうために。ねえハリー?貴方はこの戦いが終わったら何がしたい?」
「僕は……」
ハリーはそれ以上言葉が出てこなかった。
この1年弱、打倒ヴォルデモートを掲げながら、ヴォルデモートを倒した後の事なんて考えている余裕すらなかった。
もし奴を倒したら何がしたいか――目をつぶって想像したら、なぜか隠れ穴の狭い食卓が浮かんできた。
そして皆でぎゅうぎゅうになって座り、目の前にある自分の皿に、ウィーズリーおばさんが作った、白くて具がいっぱい入った暖かいシチューが注がれる。
その皿から立ちのぼる湯気越しに、ハリーはみんなの笑顔が見えた気がした。
その笑顔を見ながら食べるシチューは、きっと格別に違いない。
「僕……僕も、おばさんのシチューが食べたいです」
そう言いながら、ハリーは大粒の涙が止まらなかった。
洋服の袖で涙を拭きながら、どうしておじさんがおばさんを1人残したのか、ハリーにはその理由が分かったような気がした――。