第19章 【1日目】
「その分霊箱を見つけるために、僕らは長い旅をしていました。でも『例のあの人』に、僕らのたくらみがバレてしまいました。だから早くて明日……どんなに遅くなっても明後日にはホグワーツに攻め込んでくると思います」
明日と言う言葉を聞いて、若干ガヤガヤと場が騒がしくなったが、マクゴナガル先生のピシャリとした言葉に、部屋は再び静けさを取り戻した。
「それでポッター、わたくし達は何をすべきだと言いたいのですか?」
マクゴナガル先生が授業中に発する緊張感と同じ圧力で、ハリーに質問した。ハリーは一瞬緊張で言葉が出なくなったが、言うべきことはもう決まっている。
一呼吸置くと、ハリーは言いたいことがスラスラと出てきた。
「明後日には、僕の新しい杖が完成します。だからそれまでは決して敵に悟られないよう、絶対に戦闘にならないようにして下さい。それと先生方は、闇の陣営に決して気取られないように下級生が脱出できる準備をお願いします」
「下級生だけで良いんか?他にも逃げてぇ奴もおるだろ?」
「僕は17歳以上、つまり成人になったら戦うのも逃げるのも自由だって思ってる。でも最終的な判断は、生徒たちのことを知る先生方に委ねます」
「分かりましたポッター、生徒たちは私たち教師が責任もをってホグワーツから脱出させます!」
マクゴナガル先生のキビキビとした一言を聞いただけで、ハリーは絶対に『死喰い人』に気づかれることなく生徒たちが脱出できると確信し、会議は解散となった。
生徒たちの避難はこれで良い。だが、問題はそのタイミングだ。ヴォルデモートがどの隠し場所を訪れ、そしてどのタイミングで、どのようにホグワーツに攻め込んでくるのか……。
望むなら杖が出来る3日目まで攻め込んでほしくないが、そこまでタイミング良くいく確率は数パーセントにも満たないだろう。それでも、決してやり遂げねばならない。
「来るなら来い、僕が絶対にホグワーツを守って見せる!」
誰もいなくなった部屋で独り覚悟を決めたハリーは、母そっくりのエメラルドグリーンの瞳をキリッと輝かせた。