第18章 【闇が晴れる時】
「――3人揃ってどこに行ってたの!?この非常時に!!」
ハーマイオニー様々のお説教だった。
「だって声をかけようにも、2人とも必至な形相をしてジャガイモの皮なんて剥いてたから、声をかけたくてもかけられなかったんだよ!」
「そうだわ、それよ!!はい、これ!どっちのポテト料理の方が美味しいと思う?」
「これは……マッシュポテトとフライドポテト?」
ハリー、ロン、クリスの3人の前に、見ただけで胃もたれしそうな大盛りポテト料理の皿が2つ差し出された。
「な、なんでこんなに大量のポテト料理があるんだ?」
「それはこの分からず屋のグレンジャーが……いや、説明は後だ!とにかく食べて審査しろ!!」
「って言われてもなぁ……」
恐らくハーマイオニーが夕食の支度をしている時に、ドラコが何か余計な事を言って、それでこんな下らない争いが起きたのだろう。ちょっと予想しただけで、その光景がありありと目に浮かぶ。
こう言う場合どっちを美味しいと言っても無益な争いが生まれるので、3人でどうしたものかとまごついていると、そこに救世主とも呼べる存在が現れた。
「どうした?今日はポテトパーティなのかな?」
「シリウス!!」
「起き上がれるようになったんだね!!」
「ああ、皆のおかげだ。ありがとう」
あれだけ大怪我をしていたのに、驚くべき回復力だ。だがまだ万全ではないのだろう、笑顔がややひきつっている。
それでもシリウスの回復に皆が喜んでいる中、1人だけ気まずそうな顔をしたロンがシリウスの前に進み出た。
「シリウス、ぼ、ぼ、僕、僕シリウスに――」
「ロン、それ以上何も言わなくていい。それよりも……」
シリウスはロンの真正面に立つと、自分よりも少し背の高いロンの赤い髪の毛をクシャッと撫でて笑いながらこう言った。
「良く戻って来たな、ロン」
その言葉を聞いた途端、ロンは小さく嗚咽を吐くと、必至に歯を食いしばりながらも、涙腺が決壊したように泣きを始めた。
「ご、ごめん、皆……本当に、本当にごめん」
恐らくロケットを身に付けて旅をしている間、辛く、苦しく、うなされる、悲惨な夜ばかり過ごしてきたのだろう。クリスにも似たような時期があったから良く分かる。
ロンはそのまま地面に座り込むと、大声を出しなが心の闇を全て洗い流すかのように号泣したのだった。
