第18章 【闇が晴れる時】
見事にロンを打ち負かしたハーマイオニーは、クリス以下3名があっけにとられ呆然としている中、ずんずんとロンが倒れている方へ行き、その襟首をガッとつかむと、勢いよくロンの頬に平手打ちをかました。
「起きて、起きなさいロン!!」
冷静だと思われていたハーマイオニーだったが、本当は相当余裕がなかったんだろう。
自分で失神呪文をかけたのにもかかわらず、ロンを叩いたり揺さぶったり、物理的な手法で目覚めさせようとしていた。
そしてまたその迫力に圧されて、呆然と立ち尽くしていたクリス達だったが、ようやく事態に気づいたハリーが慌てて「エネルベート!」と反対呪文を唱えると、ロンはゆっくりと目を覚ました。
「あれ?ハーマイオニー……と、皆?」
ロンはぼやけた目で4人の顔を見た。その瞳は暗くよどみ、生気どころか先ほどの覇気も完全に失われている。
そしてようやく先ほどの出来事を思い出したのか、かすかに微笑みながら再び目を閉じた。
「そうだ、僕は負けたんだった。いいさ、僕のことはもう良い、好きにしてくれ」
「何が……よ……」
「ハーマイオニー?」
「何が好きにしてくれよ!勝手にセンチメンタルに浸らないでもっとしっかり周りを見なさいよ!!」
この数か月間、たまりにたまった感情の波が最高潮まで高まったのだろう。ハーマイオニーはぐしゃぐしゃに顔をゆがめると、大粒の涙をボロボロと流しつつ、ロンの胸に顔をうずめた。
「ロンの馬鹿!最低!!私とハリーができてるですって!?何をどう見たらそんな妄想が出来るのよ!この馬鹿!!間抜け!!鈍感!!もっと私のことを信頼しなさいよ!!こんなにもあなたを愛しているのに!!」
このセリフが効いたのか、ロンの瞳にかすかに灯りが戻った。それは小さいが、確かにいつもと同じ輝きを持っていた。
泣きながらロンの胸にすがるハーマイオニーには悪かったが、ハリーがロンの首からロケットを外すように言った。
それに対して抵抗のての字もみせることなく、ロンが素直にロケットを外すと、ハリーはそれを自分の首にかけた。そして短く、ロンにこう問いかけた――。