第17章 【最後に勝つのは】
ハーマイオニーとロンが直線状に立つと、2年生のときの決闘クラブを思い起こさせた。
あの時段上に立っていたのはハリーとドラコだったが、緊張感はあの時の比ではない。
下手したら殺されてしまうかもしれないのに、何故かハーマイオニーはわずかに笑っていた。それに呼応するように、ロンもニヤリと笑った。
「本当に良いのかい?」
「ええ、どうぞお好きに」
「それじゃあ――アバダ・ケタブラ!」
呪文を唱えた刹那、緑色の閃光がロンの杖から発射された。しかしロンの魔法はハーマイオニーの左耳を少しかすっただけに終わった。
「どうしたの?緊張で手元でも狂ったのかしら?」
「うるさい!ア、アバダ・ケタブラ!!」
またしてもロンの攻撃は外れ、ハーマイオニーの右耳をかすっただけにすぎなかった。
自信満々だったロンの顔に、冷や汗が流れる。
「あら、また外れたわね。チャンスはあと1回よ?」
「うるさい!!次こそあててやる!!アバダ・ケタブラ!!」
ロンの放った緑色の閃光が、ハーマイオニーのからだの真ん中を貫いた。まるで、あの日の父様と同じように――。
「ッ……ハーマイオニー!!」
ハーマイオニーの上半身がグラッと後ろに揺れ、そのまま仰向けに倒れる――と思われたが、ハーマイオニーの体はあと一歩のところで踏みと止まり、上体を起こすと同時に電光石火の如く杖を抜き呪文を唱えた。
「ステューピファイ!!」
ハーマイオニーの魔法は稲妻より早くロンの体を撃ち抜いた。
何故だろう、ロンが放った死の呪いは間違いなくハーマイオニーの体を貫いたはずだったのに、ハーマイオニーは死ぬどころか、見事反撃してロンを倒してしまった。
ハリー、クリス、ドラコは今見たことが信じられず、呆然としたままハーマイオニーに訊ねた。
「な、何で?どうして?」
皆の代表としてクリスが問いかけると、ハーマイオニーはサッと髪をなびかせながら、まるで授業中と同じような調子でこう言った。
「あら、許されざる呪文は本当にその人を憎んでないと使えないって、授業で習ったでしょう?たかがロケットに操られたくらいで、ロンが私を殺せるはずないじゃない」
と、事も無げに言ったハーマイオニーのに対し、ハリー、クリス、ドラコの3人は目を点にしてポカンと口を開けることしか出来なかった。