第12章 【共同生活のすゝめ】
「それじゃあ私は食料の買い出しに行ってくる。その間、2人は家の掃除をしていてくれ。正直このままでは3人も寝泊りできないからな」
それだけ言うと、シリウスは姿くらましをしてパッと消えてしまった。
確かにシリウスの言う通り、以前にもまして物があふれかえっている。ここで大人3人が眠れるほどのスペースを作るのには、骨の折れる作業になるだろう。
クリスとドラコは視線を合わせると、そろってふーっと軽いため息を吐いた。
「まさかシリウス・ブラックと同居することになるなんて……」
「流石の私もこうなるとは思ってなかったが、まあベッドがあるだけ我が家の秘密の部屋より何倍も良いさ」
「そうだな……しかしこのゴミ屋敷はどうなんだ!?人が住んでいるだなんてまるで奇跡だ!!」
「ゴミ屋敷だなんて失敬な!先生は、その、ちょっと片付けが苦手なだけで……」
流石のクリスもフォローしきれない程、この家は散らかっている。クリスがそう言うと、ドラコがうすら笑いを浮かべて肩をすかした。
「へえ、またそうやって『大好きなルーピン先生』の肩を持つのかい?」
「ドラコ、男の嫉妬はみっともないぞ」
「嫉妬じゃなくて真実だろ?」
そのままドラコはぷいっとそっぽを向くと、クリスの方を見ることなく掃除を始めた。
こんな調子でこれから3人での共同生活が始まるのかと思うと、クリスは先が思いやられると頭を抱え込むほかなかった。