第9章 初期刀のワガママと主のお仕事
鶴丸side
主は俺が来てからずっと2人の時間が取れなくてごめんって謝ってばかりいる。
俺はご褒美と言われてたくさんのワガママを主に言ったのに
主は全部に応えてくれようとしてくれて、
俺が1人でいることに若干の恐怖を持っているのも少しでも治そうと
新たにこの本丸に来た二振りと仲良くさせようと気を使ってくれている。
俺には刀の姿だった時の持ち主か前の本丸の主しか、人間というものの存在を知らない。
刀の姿をしていた時は俺欲しさに墓を暴いたやつもいた。
前の本丸の主はもう主とも呼びたくないほど、憎い存在だ。
だからこの本丸の主も似たような嫌な人間なんだと思っていた。
だが、俺がいた前の本丸に来た時から主はずっと真っ直ぐで
俺を大事にするという言葉通りに、大切にしてくれてるのがここ数日でも十分過ぎるくらい俺の知っている人間達とは違うということが分かった。
心から嬉しかった。
あんなにワガママのような頼みばかりをしたのに笑顔で受け止めてくれた。
だから決めたんだ。
これからはもっと強くなって主に頼られるこの本丸の初期刀に相応しい刀剣男士になろうと。
『鶴さん!お散歩行くよ〜!!』
「あぁ、すぐ行く!」
笑顔で俺の事を呼んでくれる主のその笑顔を護りたい。
物吉や日向には申し訳ないとは思うが、もう少しだけ主を独り占めさせてくれ…。
そしたら今度は俺も勇気を出してお前達ともちゃんと向き合って
仲良くなれるように努力するから…。
今だけは主を、俺だけの主で居させてくれ。
主との2人だけの時間を、もう少しだけ…。
後は2人に譲るから。
主と仲良くしていてもヤキモチも焼かないようにするから。
今はまだ弱い俺のワガママを…、
心の中でしかその想いを伝える事が出来ない弱い俺の最初で最後のワガママを少しだけ許してくれ。