第1章 プロローグ
蘭丸「ほら、ああいうところが。
謙信殿なら『一度経験すれば己の気の緩み具合がわかるだろう』とか言いそうじゃない?」
佐助「ふっ、その通りだね」
二人の忍びが見守っている下で、隊は整い、やってきた信長を出迎えた。
その後ろからは早朝訓練にやって来た光秀の隊が、輝く朝日を浴びて力強く歩いてくる。
信長「貴様ら、腑抜けた態度で居ると怪我をするぞ。
これより光秀の隊と剣を交える」
夜通しの訓練で疲労困憊の男達から、『えぇ』『う…』呻き声が漏れた。
龍輝「この程度で気力、体力が尽きるような鍛え方をしていないはずだ。
各々迎え撃つ用意っ!」
自分達よりも若い副隊長がいち早く片手剣を抜く姿にほだされ、疲れ切っていた全員が剣を引き抜いた。
信長「龍輝は俺と交換だ。さっさと帰って母を安心させてやれ」
そう言われて龍輝が『え?』という顔をする。
龍輝「一戦交えてから帰りたいのですが駄目でしょうか」
信長「ふっ、やはり貴様は軍神の子だな」
嬉々として剣を振るおうとした龍輝に信長は呆れ混じりに笑った。