第10章 エピローグ
ヤマザキのLINEや電話番号を削除してから約4か月が過ぎようとしていた。
季節は桜が咲く春を迎えていた。
ヤマザキとの関係は約1年程だったと思う。
凝縮された1年だった様に感じる。
今は、また毎日専業主婦の仕事に精を出している。
毎日の家事は、真面目にやっているとかなりの重労働だと思う。
専業主婦の仕事は別に嫌いではない。
だた、時々、虚しさを感じてしまう時があるのだ。
今から思うと夫の誠一は、ヤマザキの存在を知っていたのかも知れなかった。
でも、敢えて、それを私に言わなかったのだ。
毎週末、金曜の夜に六本木で遊んでいた頃、きっと誠一は気づいていたに違いない。
ジンライムは翌朝、香りが残るのだ。
毎回、私はシュガーヒルに行くと、ジンライムを飲んでいた。
そして、翌日の深夜に自宅にこっそりと戻っていたのだ。
翌朝、私の部屋に誠一が入ってくればジンライムの香りでどこに行っていたのか分かるだろう。
でも、誠一は、そんなこと一言も私には言わなかった。
それは、何故だろう。
私を失いたくなかったからだろうか。
それとも、離婚したら自分の経歴にキズが付くからそれをしなかったのだろうか。
今でもそれは分からなかった。
ただ、誠一はヤマザキの存在に気づいていたという事だけは確かだと思った。
ヤマザキとのインターコンチネンタルホテルでの思い出は今でも深く胸に残っている。