第5章 シュガーヒル
「ええ、エリが居てくれるから大丈夫よ…」
「余り、二人で深酒してハメを外さなければ行ってもいいさ…」
誠一は、またもや私がエリと一緒に六本木に行くのだと信じてくれた様だった。
私は、それを聞いた時、喜びを隠せなかった。
生まれて初めて六本木に行くのだ。
嬉しさを隠し切れなかった。
その事をヤマザキにLINEしたのだ。
「金曜日、一緒に六本木に行くわ…」
「良かった。嬉しいよ。一緒に六本木の夜を愉しもう…」
そして金曜日がやって来た。
その日もいつもと変わらず誠一を玄関先で軽く抱きしめてハグをしてから会社に送り出した。
今夜、誠一は外で夕飯を済ませてくると言っていた。
私はいつものように朝から家事をこなしていった。
そして、夕刻近くになると身支度を始めたのだ。
何を着ていったら良いのか分からなかった。
季節は桜の花が咲く春なのだ。
キャメルのコートは必要ないと思った。
散々迷った挙句、ヤマザキが買ってくれた黒のノースリーブのミニワンピに白いカーディガンに春物のジャケットを羽織っていく事にしたのだ。
待ち合わせは六本木の駅の本屋だった。
その当時、六本木の駅を降りると直ぐに本屋があったのだ。
私は、その本屋で良くヤマザキを待っていたのを覚えている。
夕方5時に自宅を出て最寄り駅まで歩いて行った。