第3章 お持ち帰り
私は、またワイングラスに唇を当て、ワインを一口飲んだ。
ワイングラスに薄く付いたリップの跡を指先で軽く拭き取った。
ヤマザキは私の表情を見て話題を変えようとした様だった。
「僕さ、六本木のクラブに良く遊びに行くんだけど、美都さんてクラブとか行くの?」
「え?クラブなんて行ったことないわ…」
私はクラブなどこの時、人生で初めて聞いた様な気がした。
クラブってどんなところなんだろう。
そんな事を思いながらヤマザキの話しを聞いていた。
「クラブは愉しいところだよ。軽く飲んで身体揺らして踊るんだ…」
「私、踊ったことなんてない…」
「大丈夫さ、行けば直ぐに慣れるよ…」
ヤマザキの言葉は優しいものだった。
私はクラブという場所にその時行きたくなったのだ。
「連れて行ってくれるの?」
「うん、美都さんが良ければね…」
「いつか、行きたいな…」
「連れて行くよ…でさ、そのクラブでの話しなんだけどさ…」
興味津々に私はそれを聞いていた。
「僕さ、クラブに行くと良く若い女の子から“お持ち帰り”されちゃうんだ…」
そう言うと、ヤマザキは笑っている。
お持ち帰り?男性が女性をお持ち帰りするのは聞いたことがある。