第20章 幸福
「人ってさ、何のために生きて、なんのために働いていたりするんだろうね」
いきなり哲学の話し?
人は何故生きるのか?
生きたいから生きているんじゃないのか。
死にたくないから生きているんじゃないのか。
必死に考えて絞り出し、そして五条悟のそのなぞかけのような問いの答えにピンときた。
「"幸福"になるため……?」
「じゃあ、"幸福"になったらどうする?」
幸福になったら?
どうするも何も。
幸福になるためにみんな働いて生きてるんだから、そうなったらいいんじゃないのか。
呪術師という、いつ死んでもおかしくない仕事をしているけど。
それでも虎杖や伏黒、野薔薇がいて、禪院真希や狗巻棘、パンダもいて。
他の呪術師たちと一緒に仕事して、辛い時もあるけど楽しくて。
それでいて、私は今幸せだけど。
でも、きっとそう言う単純なものじゃないんだ。
話しの真意を読み取ろうとするが、今の私ではその真意は読み取れなかった。
「心も体もすべてが満たされて、世界は煌めいたりバラ色になったりそういったものに変わる。憂いも悔いも悲しみも苦しみも病気も戦争も貧困も塵となって消え失せる。世界中で生きている人間誰しもがみんな兄弟で、人と人との間、世界の間にも幸せが充満し、欲望も本能もなく、あるのは美しく輝く幸福感だけ」
ぽかんと口を開いてしまう。
アホな顔を二人に見せているけど、七海の言葉を何度も頭の中で反芻するけど、すごいいいことじゃないのか。
病気も戦争もない世界は、全人類が望む理想の世界だろう。
私だって望んだ。
虐めのない世界があったらどんなにいいだろうって。
調和と平和をずっと望んでいた。