第10章 宝物(政宗編)
政宗「それで、さくら…体は酷くないのか?」
さくら「はい!順調だそうです、悪阻も殆どなく、ただ、秀吉様と家康様から激しい夜の営みは控えるようにと言われております」
政宗「激しくなければ良いのだな!」
さくらはその一言が可笑しくて、ケラケラ笑った。
政宗がさくらを布団に優しく横たわらせ、その横で、自分も肘枕をして横たわり、膨らんでもない腹に手を添えて愛しそうに目を細めて撫でた。
その様子にさくらはまた政宗に惚れ直してしまうのだった。
この人の子が腹の中に居るのだと思うとそれだけで幸せな気持ちが広がった。
さっき「激しくなければ(抱いても)良いのだな!」なんて言っておきながら、政宗はその気はなさそうだ。
ふいに、体を起こした政宗が箱を持ってきてさくらの目の前で開けた。
政宗「酒は飲めなかったが、もう一つお土産だ。」
中には青いガラスに金箔が散らされた玉がついた簪が入っていた。
さくら「わぁ!綺麗!見て…光に透かすと政宗様の目みたい。大切にしますね!」
政宗「そんなたいしたものじゃないが…喜んだなら良かった。離れていて、してやれることなど知れているな。」
さくら「そんなことないです。政宗様は、寂しがり屋の私に沢山宝物をくれるんです。文も、簪も…。そして新しい命も。」
政宗「俺にとってはさくらが宝物だぞ。明日、元気ならそれをつけて、信長様の所にも一緒に挨拶に行かないとな。秀吉のところもか。奥州の城もお前を迎える準備を早速させよう、今日はもう休め。」
頭をポンポンと撫でると、行灯の火を消した。
さくら「政宗様、体調が安定するまで、冬の間私は安土から動けません、春には上杉との戦も控えてる。政宗様に次に会えるのは何ヶ月先になるやら。私は寂しがり屋なのですよ。今日は寝ずに愛し合いたいです。」
私は仰向けの体制のまま政宗様に両手を伸ばしこっちに来て!と合図を出した。
政宗「大胆なお姫様だな…」
政宗はしなだれこむように、さくらの腕の中に入りこみ、沢山の口付けを交わした。