第6章 秋の夜に置いた恋【R18】
☆さくら目線☆
気を失い、政宗様に支えられながら湯を浴びに行き、女中達に体を拭いてもらい、ようやくさくらは自分を取り戻した。
だが、心の奥から上がる、冷たい恐怖と罪悪感が消えない。
いとも簡単に命を奪ってしまったという事実――その重みが、心を締めつけた。
友人だったあおいを自らの手で殺めてしまったこと、その取り返しのつかない行為が蘇り、湯浴みを終えても、血が洗い流されている感じがしなかった。
湯浴みが終わるのを廊下で政宗様が待っていてくれた。
政宗「今日は俺の部屋に来い」と呼ばれ、手を引かれた。
戸惑いはなかったし、政宗様が握ってくれた手が優しく、大きくて温かくて秀吉様を思い出した。
さくら(そういえば、秀吉様に手を握られた事はないか…)
部屋に入ると、政宗様はさくらを褥の上に私を座らせ、静かに言った。
政宗「今日は俺が見張っておく。だからお前は安心して寝ろ。」
政宗様の言葉には優しさしかなかった。
さくら「私は…」はかすれた声で何か言いかけたが、政宗は軽く首を振って制した。
政宗「何も言わなくていい。ただ、休め。今はお前の心も体も限界に来ているんだ。」
頭の中はまだ混乱していたが、心のどこかで、政宗様がそばにいることに少しだけ安心感を覚えていた。
さくらは正座したまま眠い目で政宗を見つめていた。
まだ熱が完全に引いたわけでもない。
熱ではなく恐怖からくる震えでまだ悪寒がするが、気づけば秀吉様がかけてくれた羽織をかけていた。
さくらは秀吉様の香が包んでくれている安心感と同時に、いない秀吉を想うと辛かった。
どうして今私のそばにいてくれないのか…。
政宗がさくらの核をついてきた。
政宗「人を殺めて興奮して寝れぬか?横になると楽だぞ」
秀吉様を守ることは大義のためと信じたい。
友人のあおいに憎しみはなかった。
それよりもむしろ恨み殺したかったのは私を奴隷にした男だ。
また私を罪悪感が襲う。
恨み殺したかった男は殺さず大切な友人を殺した私はなんだと言うのか。
恨みで人を殺そうとしたあおいの方がよっぽど共感できた。
政宗様も秀吉様も私には到底理解出来ない苦しみを背負っておられるのだ。