第5章 事件
☆政宗目線☆
廊下の奥がうるさい。女の悲鳴も聞こえ、慌てて部屋から出ると、廊下の奥に、秀吉と、小さく蹲る知った顔があった。
政宗「秀吉!無事か?…っ!??さくら!!!!」
秀吉を見ると無事そうだが、血だらけのさくら見て、さくらが刺されたのだと一瞬頭が真っ白になった。
駆け寄ると、横にいた秀吉が「さくらは無事だ」と呟いた。
政宗「お前が守ったのか。秀吉を」
慌ててさくらに駆け寄ると、どうやら無事なようだ。
政宗「さくら、無事か?」
さくら「無事です。返り血です…」震えながらか細い声で答えながら両腕を抱えている。
政宗は横たわるあおいを見て全て悟った。
秀吉はさくらに優しく声をかけて、羽織を被せた。
秀吉「さくらお前が謝る必要はない。俺の命を守ってくれたんだ。礼を言うよ。そして、辛い想いをさせてごめんな。」
さくらは涙を浮かべながら、ふるふると顔を横に振った。秀吉を守れたことへの安堵と、自分の行為の残虐さに心が追い付いてないのであろう。
急に現実に引き戻されたのか「あおいを助けて」と泣き叫んだが、そのままさくらは気を失った。
秀吉「すまんが、御館様に報告にいく、政宗!さくらを頼めないか?」
政宗「ここはお前の役目じゃないか?」
秀吉「俺が巻いた種だからな。」
秀吉が肩に手をポンと置くとそのまま振り向かず歩いていった。
政宗はさくらの腰に手を回し、支えながらゆっくりと担ぎあげ、女中たちを呼ぶと、湯浴みの準備を頼んだ。
湯浴みの途中で気を戻したさくらは裸で女中たちに体を拭かれ、綺麗な着物に着替えさせられた。
さくら「政宗様…私は」
政宗「言うな。あの寝床へは戻るな。今日は俺の部屋へ来い。」
さくらはただ、焦点の合わない目を黒くして、政宗の後をついていった。
政宗が途中で手を握り引いてやったが、折れてしまいそうなほど華奢だった。
政宗(火事場の馬鹿力ってやつか、このようなか弱い手で、一太刀で手首を半分落としたのか)
と生々しい現場を思い出した。
政宗(…戦場はあんなもんじゃないがな)