第1章 出会い
戦国の混乱期、飢えと寒さが常につきまとう貧しい農村。
家は粗末な藁葺きで、風が吹けば隙間から冷気が入り込み、冬の寒さは骨に染みた。
家族はその日を生き抜くために必死で働き続けたが、豊かな作物を得ることはできず、日々の食事も満足に取れない。
父は戦に取られ、母も病に倒れた、幼い弟は流行病で亡くなった。
命は羽のように軽く、家族を守ることができない絶望の中で、生きるために売られることとなった。
14歳の時、さくらは米一俵にも満たない値段で知らない男に買い取られた。
さくらが家族を恨む気持ちは不思議となかったが、ただ、自分の運命がその瞬間に大きく変わることを感じ取っていた。
売られた先で彼女を待っていたのは、容赦ない労働と暴力だった。
炊事や掃除、畑仕事に駆り出され、休む暇もなく働かされた。食事は粗末で、身体を休める場所も寒々しい一角。だが、それ以上に彼女を苦しめたのは、夜ごとに男たちの欲望に屈することだった。
身体は痛み、心は擦り切れていく。日が沈むと恐怖が募り、夜が明けることをただ無感情に待つしかなかった。希望という言葉はとうに彼女の中から消えていた。
生きている意味などもはやない。
ある日、さくらはふと台所で包丁を見つけた。小さかったが、その鋭さはまだ感じられる。冷たいその刃を手に取った瞬間、心の中で一つの答えがはっきりと浮かび上がった。
さくら(これで終わらせよう)