第13章 人魚姫
「よぉ、タケル!」
タケル「中也!!」
共喰い事件後、やっとタケルに逢いに行くことができた。
流石に1000人をぶっ飛ばし、自供させるとなると5日はかかった。
俺が小説世界から出てきた頃には、全てが終わっていた。
今回の共喰いで、首領の隙を突かれたのは野村が裏で手を引いていたからだ。
そう、彼奴はスパイだったのだ。
奴の異能力は触れた人間の惚れた人物になることができるらしいのだ。
見た目だけではなく、声なども真似することができるんだとか。
然し、それは触れた人物の目にしかそう見えないらしい。
だが、今回野村は異能力を使うことはなかった。
俺の秘書として潜入したものの、俺は別に惚れた奴などいないから彼女の異能力は効かなかったのだ。
結局は、首領の様子を監視し、エリス嬢と買い物に出たタイミングを襲わせたそうだ。
野村の持ち物からは、様々な物が出てきた。
然し、見覚えのないものもあったそうだ。
GPSの端末と、携帯だった。
GPSの端末を開けるも位置は表示されず、携帯はぶっ壊れていて再起不能。
謎はあったものの、野村の動機はポートマフィアへの復讐だった。
彼女の両親は先代の首領の交戦に巻き添えで亡くなったらしい。
然し、先代の首領はとっくの昔に死んだ。
理由はどうであれ、ポートマフィアに刃向かったものは全員処刑だ。
野村は結局処刑され、主犯格のフョードルは無事逮捕された。
何はともあれ、一件落着し、やっとタケルに逢いに来れたのだ。
「そーいや、なんで手前と知り合ったんだっけ?」
タケル「忘れたの?中也おじさんだなー」
「俺はまだ22だ!」
タケル「ほら、あの時じゃん!」
「あの時って?」
タケル「ほら、、、、もぉー、中也のせいで忘れちゃったじゃん!」
「人のせいにすんじゃねぇよ!」
タケル「そうだ、中也って人魚姫のお話知ってる?」